化学的加工処理によるスギ曲り材利用技術の開発

−フィルム転写による住宅用内装材の開発−

 
 予算区分 県単              研究期間 平成8〜11年度
 担 当 課 製品開発課           担 当 者 藤澤泰士,鈴木 聡,鷺岡 雅
 
1.目  的
 県産スギ材から付加価値の高い住宅用内装材を製造するため、木目などの木材素地感を生かし、かつ均一な色調整、耐汚染性など新たな機能を付与できるフィルム転写技術を開発する。ここでは、フィルム転写木材の製品展開を拡大するため、曲面材へのフィルム転写を検討した。
 
2.内容および方法
 曲面用転写ロール(外部加熱方式)を試作するとともに、低温度転写に対応できるフィルムについて検討した。
 1)供試材料:タテヤマスギのモルダー加工材、幅144×長さ900、R=110、凹凸差15mm
 2)曲面用転写ロール:表面の凹凸に追従する軟質ゴム製の転写ロールを試作した(図−1)。
 
                      主な仕様
                       硬   度:10°  転 写 幅:100mm
                      ゴム外径:210mm、ゴム内径:110mm
                       シャフト径:90mm、外部加熱方式(赤外線ヒータ)
       図−1 曲面用転写ロール
 3)低温度転写フィルム:熱軟化温度が低い低分子ポリエステル樹脂25〜75%を熱接着樹脂に混合  して、低温度転写フィルムを作製した。転写フィルムはPETシート上に剥離樹脂層、着色樹  脂層、熱接着樹脂層を各々2〜3μm積層して調整した。
 4)転写方法:試験材表面をギアオーブンで180℃に加熱。次にロール転写装置を用いて、ロール温度150℃、基材温度80℃、速度10m/minでフィルムを転写後、PETシートを剥離し、再度フィルム表面をギアオーブンで150℃に加熱した。
 
3.結果の概要
 1)曲面材の表面温度は頂部と谷部で55〜80℃の差が生じていた。また、転写ゴムロール(外  部加熱方式)の温度は、転写前に150℃あったものが、転写後130℃まで低下し、平板に使用  した転写フィルムでは転写することができなかった。
 2)この転写不良を改善するため、低温度転写フィルム(熱接着層に50%ポリエステル樹脂を混合)  を検討した結果、転写ロール温度120℃、基材表面温度40℃で転写が可能となった(図−2)。
 3)開発したフィルムを用いてスギ曲面材へ転写した結果、転写を良好に行うことができ、フィ  ルム接着力も住宅用内装材として十分な値(平面引張り強さ4.6kgf/cu以上)を示した(図−3)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    図−2 低温用転写フィルムの平面引張り強さ      図−3 曲面材の平面引張り強さ
4.今後の課題
 1)連続した凹凸形状への転写
 2)実大サイズでの試作、製造マニュアルの作成およびコスト試算